2009年 08月 25日
道沿いの家の前に、遠目にも鮮やかな、はっきりした色の花が咲いていた。 なんだろうと近づいてみて、「あっ!ヒオウギだ!」と声を上げそうになった。 赤、というよりオレンジに近い、しっかりと自分を主張しているような花である。 この花の実が「ぬばたま」といわれ、歌の世界では「夜」とか「黒」の枕詞になっていて、万葉集にも歌われているということは、若いころ、ある友人が教えてくれた。 居明かして 君をばまたむ ぬばたまの 我が黒髪に 霜はふるとも 万葉 89 久々に万葉集をひもとき、私はえっと思った。最後のフレーズ、「霜はふるとも」を、私はずっと、「霜のおくまで」と覚えていたからだ。 髪に白いものが混じるようになるまで、つまり長い、長い間ずっとあなたを待ち続けます、という万葉時代の女性の激しい熱情を見、さすが古代の女性は激しい恋をするものだ、と感嘆したから、この歌を覚えていたのだろう。 「霜はふるとも」はその情熱を内に秘め、じっと耐え忍ぶ女性の姿が浮かんでくる。 若かった私は、情熱的な万葉女性を無意識のうちに理想化していたかもしれない。 もうとっくに《我が黒髪》には《霜がおかれた》今となって、この歌のしみじみとした味わいが胸に迫る。 秋になり、この情熱的な花からは想像もできないような、つややかなまっくろに光る「ぬばたま」ができるころ、またこの「ひおうぎ」のある家の前に行ってみようとおもっている。
by mimishimizu3
| 2009-08-25 08:32
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