2011年 10月 02日
木犀の雨のあいまに匂いくる
テレビで、木犀が香り出したといっていました。
木犀と言えば、忘れられない思い出があります。

もう20年以上前のことと記憶していますが、ある大学教授の家庭に招かれたことがあります。
教授はもちろん日本人ですが、奥様はフランスの方でした。
背は高く、眼はブルー、髪は金色、肌は透き通りように白く、まさにフランス人形を大人にしたような、文字通りの「金髪の美女」でした。御宅にお邪魔する前にも何度かお会いしていましたので、優しい人となりも分かっていました。

ただ、私はフランス女性が作り出す家庭の雰囲気はどんなものか、ちょっと興味がありました。
きっと西洋的な、絵画で言えば「油絵」的なものを私は暗に想像していたのかもしれません。

ところが、マンションの玄関を入って、まず私の目に飛び込んできたのが、ひとつの「短冊」でした。
達筆な運びで俳句が書かれてありました。

    木犀の  雨のあいまに  匂いくる

f0103667_9492959.jpg


私がその短冊をじっと見つめているので、教授がそばにやってきて説明してくださいました。
この短冊は教授の父君の書であり、内容は長女が生まれた時の状況を詠んだものだとか・・・

息子が異国の女性と結婚し、子どもが生まれることとなった。今か今かと待っているとき、ふっと木犀の香りがしとしとと降る雨の中を漂ってきた・・・・・木犀の優しい香り、その優しい香りに包まれ、木犀に連れられてくるように、この世にひとりの女の子が誕生した・・・

その話を聞いて、私は胸がいっぱいになりました。
今から40年以上前、国際結婚などまだまだ珍しかった時代、明治生まれの父親として、息子が外国の女性と結婚するのを認めるのはかなりの勇気がいったことではなかったでしょうか。

でも、「孫」が生まれてくる・・・その喜びを木犀の香りに託した教授の父もすばらしい方ですし、そんな優しい家族の下に生まれてきたハーフの赤ちゃんも幸せです。

木犀が香ってくると思い出すエピソードです。

by mimishimizu3 | 2011-10-02 09:49 | エッセイ


<< 鳥      敗荷 >>