2012年 04月 01日
ミモザと「ミモザ館(やかた)」
春の陽がやわらかく降り注ぎ、桜もまるで恥らうかのように、一つ二つと咲き出した。

いつもの散歩コースの途中、ふと道を一本そらしてみようと思った。
まだまだ、苗木からやっと大きくなり始めた桜の木を見ながら、顔をあげたとたん、私は「あっ」と声を上げた。
9階建てのマンションの裏庭に、マンションと織り成すかのように、大きなミモザの木が満開の花をつけ、風に揺られていたのだ。

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どこか南国のイメージを髣髴とさせるその花を、私は感慨深く眺めた。

1960年代、私は東京で学生生活を送っていた。
そのころから映画好きだった私は、時間ができるとよく新宿の「名画座」に行った。
今で言う、ミニシアター、なのだろう、値段も安く、よく「往年の名画」を上映していた。
そんな中の一つに「ミモザ館」があった。

内容はすっかり忘れてしまったが、私が「ミモザ館」をいう題名を強烈に覚えていたのはわけがある。
それは「ミモザ」というのが、木であり、黄色い大きな花を咲かせるということをはじめて知ったからだ。
モノクロであったから、ミモザが黄色であることは映画ではわからなかったはずだ。多分セリフの一部にでも出てきたのだろうか、私の脳裏には風に揺れる大きなミモザの花が鮮やかに印象付けられた。

しかに、実際に私がミモザの花を目にしたのはそれからずっと、ずっと経ってからであった。
50年前、日本にはまだ「ミモザ」はそれほど多くは存在していなかったのではあるまいか・・・

映画を見てから数年の後、私はある要件を抱え、鎌倉の一軒の家を探していた。重い用件であった。私の心も重く、沈みがちな暗い気分をどうしようもなく、私ははじめて歩く道に戸惑っていた。
そのとき、誰の姿もない、、静かな、いかにも鎌倉、という感じの古い家の門に、大きなミモザの花がもたれかかるように咲いているのが目に飛び込んできた。
それは家の雰囲気と取り合わない、ちぐはぐな感じを私に与えた。しかし、私はその花をじっと眺めた。
生命力がありそうな、強そうなその花は、そのときの私にエールを送ってくれているような気がしてきた。
私は顔をあげ、道を歩き出した。目的の家を探し当てたとき、私はなんだか前向きになれるような気がしていた。

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ネットで調べてみると、「ミモザ館」は、1934年製作、フランスの名画の一つに数えられているようだ。
ストーリーはとっくに忘れても、題名は、きちんと覚えている・・・・私にとっては忘れられない映画である。

ミモザは最近、ところどころで見かけるようになった。
散歩の途中、ふと目にしたミモザ、思いもかけず、遠い昔を思い出させてくれた。

それにしても、私は「ミモザ館」を一人で見に行ったのだろうか、それとも誰かといっしょにいったのだろうか・・・
それは深い霧のにつつまれて、思い出すことはできない。

by mimishimizu3 | 2012-04-01 10:16 | エッセイ


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