カテゴリ:童話( 4 )

2012年 04月 30日
春の雑草 Ⅲ コバンソウ
ある日、山の中でキツネの坊やのキン太と、タヌキの坊やのポン太がばったり出会いました。
キン太がポン太にいいました。
「オマエ、なんか化かすことできるのか?」
タヌキのポン太はいいました。
「できるとも!おいらはなんだって化かすことできるのさ」
するとキツネのキン太は調子に乗って、「じゃあ、葉っぱを小判にしてみろよ」といいました。
ポン太はその辺の葉っぱを取って、一生懸命おまじないをかけました。が、葉っぱは小判になってくれません。
それを、ニヤニヤと見ていたキン太がいいました。
「おれ様は、小判など簡単にできるぞ」

キツネのキン太は、後ろ手に、そっとコバンソウを隠して持っていたのです。そのコバンソウは、お父さんのキツネから、タンポポの汁をたくさんかけてもらい、きらきら光っていたのです。だから、本当の小判のように見えました。

「エッヘン!これはコバンであるぞ!」
キツネのキン太は得意になってタヌキのポン太に見せました。
ポン太は目を丸くして驚きました、本当に小判のようです。

「すごいなあ・・キン太くんは、化かすの上手だねえ・・・さすがきつねだねえ・・・」

でも、そのとき、急に雨が降ってきました。
キン太の持っていたコバンソウにも雨が当たり、たちまちタンポポの汁が溶け出し、流れていきました。

そこにはその辺にいっぱい咲いている、普通のコバンソウがあるだけでした。

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「なあんだ・・・普通のコバンソウじゃないか・・・」
タヌキのポン太がそういうと、キツネのキン太は顔を赤くして、すごすごと、尻尾を巻いて山に帰っていきましたとさ。

オシマイ。

by mimishimizu3 | 2012-04-30 09:12 | 童話
2012年 03月 02日
さっちゃんのおひなさま
 ある日、さっちゃんはおかあさんと、街へ出かけました。いとこのみっちゃんが病気で入院しているので、お見舞いに送ってあげるものを探しにいったのです。
 おかあさんはデパートをあちらこちら歩いて、なにがいいかなー、と探しました。ケーキがいいかしら。お花がいいかしら。洋服がいいかしら。おかあさんは一生懸命考えているようでした。
 さっちゃんは、ケーキもおいしそう、お花もきれい。洋服もステキと思いました。でも、おかあさんはなかなか決心がつかないようでした。
 そのうち、さっちゃんは疲れてしまいました。デパートは人がいっぱいいて、おかあさんの手をしっかりにぎっていないと迷子になりそうです。
 ふと見ると、ノートや、お手紙を書く紙などを売っているところに、きれいな紙のおひなさまがありました。さっちゃんが大好きな“飛び出す絵本”のように、折りたたんであるきれいな紙をぱっと開くと7段のおひなさまが飛び出してくるのです。さっちゃんは思わずおかあさんの手を離し、そのおひなさまのところに行きました。
さっちゃんは手にとって開いてみました。すると一番上のお雛様がうれしそうに、さっちゃんの手の中でにっこり笑ったのです。さっちゃん、はびっくりしました。
 「さっちゃん、さっちゃん」おかあさんがあわててそばに来ました。「手をはなしちゃダメじゃないの」
 さっちゃんはおかあさんに言いました。
 「おかあさん、このおひなさま、笑うのよ。さっちゃんに買って」おかあさんはちょっと不機嫌そうな顔をしました。
 「紙のお雛様が笑うわけないでしょ。それにおひなさまなら今、おうちに飾ってあるじゃないの。あのお雛様は何十万円もしたのよ」何十万円というところを、おかあさんは特に強く言ったようでした。そばにいた人がふっと振り返っておかあさんを見ていました。

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 「あんな立派なおひなさまがあるのに、なんでこんな紙のおひなさまをほしがるの。さあ、いきますよ」
さっちゃんは悲しくなりました。今家に飾ってある立派なおひなさまも、とってもとっても好きです。でも、この小さな紙の飛び出すおひなさまだって、とってもとってもかわいいのです。なにしろ、さっちゃんに笑いかけてくれるのですから。
 でも、おかあさんが見たときは笑っていませんでした。だから、おかあさんはおひなさまが笑うなんて信じないのです。
 しばらく行くと、おかあさんが、「そうだ!!」と、すっとんきょうな声をあげました。
 「さっちゃん、あの紙のおひなさま、買いましょう。」
 おかあさんは急いで引き返すと、店員さんに「そのおひなさま3つください」といいました。さっちゃんはまたびっくりしました。3つもどうするのでしょう。さっちゃんは一つでいいのに・・・と思いました。
 でも、店員さんが包んでくれる前にさっちゃんは一つ一つのおひなさまをみました。すると、どのおひなさまもさっちゃんを見て、にっこりほほえんでくれたのです。
さっちゃんはうれしくなりました。
 「さあいくわよ」店員さんから紙のおひなさまを受け取ると、おかあさんはそういってさっちゃんと手をつなぎました。

「あのね。おかあさん・・・」さっちゃんがいいかけようとした時、「これはね、」とおかあさんが話し出しました。おかあさんはこのおひなさまを病院いるみっちゃんと、“施設”とかというところにいる、おばあちゃんに送ろうと思ったらしいのです。
 家にかえると、さっちゃんはみっちゃんとおばあちゃんに、ひらがなだけのお手紙を書きました。
 「このおひなさまは、きっとびょうきをなおしてくれます。はやくよくなってね。」
 翌日、さっちゃんはまたおかあさんと手をつなぎ、家を出ました。郵便局におひなさまを出しにいくのです。でも、その前におかあさんはお花やさんに寄って、みっちゃんとおばあちゃんのところにお花を届けてくれるように頼みました。それから郵便局に行きました。郵便局のお姉さんはぽんとスタンプをおしました。さっちゃんはおひなさま痛くなかったかな、と心配になりました。でも、大丈夫だったようです。

 桃のはなが全部散ってしまったころ、みっちゃんが退院したと電話がありました。
 みっちゃんのママとさっちゃんのお母さんの長い長いでんわがすみ、みっちゃんとさっちゃんが話しましたみっちゃんは小声でさっちゃんにいいました。
 「そこにさっちゃんのおかあさんいる?」
 さっちゃんが「いないわよ」と答えるとみっちゃんはやっと安心したのかさっちゃんに言いました。
 「さっちゃん、知っていた?あのおひなさま、笑うのよ。でもね、それは、私が一人でいるときだけなの。ママが来るとおひなさま、もとのすまし顔になるんだから」
 さっちゃんはくっくと笑いました。そうなんです。さっちゃんのときもおかあさんがくると、おふなさまはツンとすました顔に戻ってしまうのです。
 「うん。こどもにしか笑ってくれないのね。大人にはダメなの」さっちゃんがそういうと、みっちゃんも「そう、そう」といいました。そしてふたりは楽しそうに電話でわらいあいました。
 おばあちゃんからも電話がありました。あのおひなさまがおばあちゃんのお部屋にきてから、おばあちゃんの膝の痛みがなくなったそうです。さっちゃんは「おひなさま笑った?」とおばあちゃんに聞きました。「エッ、なんのこと?」おばあちゃんはいいました。それでさっちゃんはもっとはっきりわかりました。
 やっぱりあのおひなさまはこどもにしか、笑ってくれないのです。
 おばあちゃんとのでんわが終わるとさっちゃんはおひなさまのところにいきました。おひなさまはにっこり笑ってくれました。さっちゃんは「いつまでも大事に持っているからね」とおひなさまにいいました。
 おひなさまはこっくりうなずいたようでした。

by mimishimizu3 | 2012-03-02 11:16 | 童話
2012年 01月 17日
童話 月とウサギと鐘 後編
昨日の続きです。
昨日の分を読まれてない方は前編からお読みくださいますようお願いいたします。


 三日月とウサギと鐘は家の外に出ました。外は気持ちのいい風が吹いていました。空にはほんもののお月さまがこうこうと輝いています。村は静かで物音もしません。
 三日月とウサギと鐘は並んでテラスに出ました。ウサギの長い足が鐘にちょっと触れました。
 その時です。鐘がやさしい音をだしたのです。「あっ、鐘さん、いい音!」ウサギは思わずそういうとうっとりと聞き入ってしましました。「本当だ、きれいな音ですね」三日月もうっとりしました。
「ウサギさん、もうすこし私に触れてくれませんか」と鐘がいいました。ウサギはあんまりすてきな音だったでもっと聞きたくなり、長い手で鐘にそっとさわりました。すると、鐘はさっきよりもっとやさしい、美しい音色をだしたのです。それだけではありません。ウサギがぽん、ぽん、と鐘のあちこちをやさしくさわると、すばらしい音楽がかなでられたのです。
 それは、それまで誰もきいたことのないような、澄んだ、美しい音楽でした。誰の心をも暖かいものにして、もし、悪い心を持った人がいたら、その悪いものを流してしまうほどの音楽でした。
 その音楽は夜の風に乗って流れていきました。クロウナガンさんのかなり離れた隣の家から人が出てきて、びっくりしたように鐘を見つめました。「なんて美しい音楽なんだろう!」隣の人はそういうと、涙を流しました。  そして、しばらく鐘の音楽に聞き入っていたかと思うと、家に行き、パンとりんごを持ってきてクロウナガンさんにあげてほしいと、鐘の前におきました。
 次の夜、ウサギと鐘の作り出す音楽は隣の村にも届きました。隣の村から人がやってきて、みなうっとりと音楽に聞き入っていました。そして多くの人が、クロウナガンさんのために、パンやチーズや牛乳やりんごを鐘の前においていきました。
 クロウナガンさんは、それらのパンやチーズやりんごを食べて、だんだんと元気を快復していきました。
ウサギと鐘と三日月の評判はどんどん広まっていきました。遠いところからも人がたくさん鐘の音楽を聞きにくるようになりました。そして、食べ物だけではなくお金を置いていく人もあらわれました。

 クロウナガンさんはすっかり元気になりました。すると粘土をたくさん買いこんできたのです。もっともっと鐘を作って、音楽を鳴らし、もっともっとお金もうけをしようという心が起こってしまったのです。
 クロウナガンさんは鐘とウサギをたくさん作りました。
 でも、クロウナガンさんがいくら一生懸命、鐘とウサギを作っても、どの鐘もウサギも動きません。「いのち」がないのです。それもそのはず、音楽をかなでた鐘とウサギと三日月はほんもののお月さまから「いのち」をいただいたから音楽がかなでられたのです。それはクロウナガンさんを本当に愛したウサギと鐘と三日月を、ほんもののお月さまが見届けてくださったからなのです。
 いくら作っても音楽を出さないと判るとクロウナガンさんは怒りだしました。そして、「そんなもの出て行け!」と怒鳴りました。
 ちょうど満月になっていました。
 空のお月様はクロウナガンさんの家の窓を覗き込み、ため息をつきました。そして、あの時と同じような光の帯をすーと、クロウナガンさんの家の窓にさしいれると、音楽を奏でたウサギと三日月をすくい上げ、ひかりの帯に乗せ、空高く、自分のところまで運びました。三日月はほんもののお月様の中に入り、お月様の一部になりました。ウサギもお月様の体のなかにはいりこみました。お月様に抱かれてウサギは今でも元気です。
 鐘はどうなったでしょう?
 鐘は、音楽も出さないまま、クロウナガンさんの家の庭にいまでもいます。ただ、月が出るとなんとなく、悲しそうに泣くような声がきこえるといううわさがいつのころからかたつようになりました。
 クロウナガンさん?クロウナガンさんがその後どうなったか、誰も知りません。月とウサギが本物のお月様のところに行ったその日から、クロウナガンさんの姿は誰も見たことがないのです。どうしているのでしょうねえ・・・

by mimishimizu3 | 2012-01-17 15:59 | 童話
2012年 01月 16日
月とウサギと鐘
童話。
月とウサギと鐘。前編

 むかし、イギリスのある小さな村のはずれに、クロウナガンという男の人が一人で住んでいました。クロウナガンさんは彫刻家でした。
 彫刻家というのは、粘土や石や木でいろいろなものをつくり、形にしていく人のことです。クロウナガンさんも、粘土で形を作り、石膏(せっこう)で型を取り、ブロンズという金属で仕上げていっていました。
 クロウナガンさんがよく作るものは、月とウサギと鐘でした。月はまあるい満月よりも、三日月が好きでした。 ウサギもつくりました。でも、クロウナガンさんのつくるウサギは本物のウサギとはだいぶ違っていました。手も足も長いのです。胴体も長く、顔と耳はウサギらしいのですが全体はなんだかウサギらしくないウサギでした。鐘も好きでした。教会の屋根にあるような鐘をていねいに作りました。
 
 でも、クロウナガンさんははじめから彫刻家になったわけではないのです。小さい頃から粘土遊びの好きだったクロウナガンさんはお父さんにいいました。「私は彫刻家になりたいのです」。するとおとうさんはすぐにいいました。「ダメだ。彫刻家になんてなったって、食べていくことはできない。おまえは法律家になりなさい」
 クロウナガンさんは法律の勉強をしました。学校を出て、お父さんの言いつけどおり法律家になりました。でも、ちっとも楽しくないのです。夜、空に浮かぶお月さまを眺めては、三日月を作りたいと思い、野原に出かけ、元気にぴょんぴょん飛ぶ野うさぎをみては、ウサギをつくりたいと思いました。教会があると、その屋根をみあげ、鐘をじっと見つめていました。
 とうとうクロウナガンさんは我慢できなくなり、法律家をやめ、いなかの小さな家に引っ越してきました。
それまでためたお金でなんとか生活しながら、こつこつと月とウサギと鐘を作っていたのです。
 けれど、クロウナガンさんの持っていたお金はどんどん減っていきました。毎日、少しのパンとチーズしか食べられません。クロウナガンさんは日増しに痩せていきました。それでも、クロウナガンさんは幸せでした。月を作り、ウサギを月の上に乗せました。鐘も作りました。鐘は月の後ろに置き、月を見守るようにしました。

 ある日のことです。ウサギの耳をていねいになでている時、クロウナガンさんはふぅっとあたりがぼんやりかすんでいることに気づきました。あたりが夕方のように暗くなってしまったのです。クロウナガンさんはそれはめまいというものだと思いました。食べるものがあまりないので、体が弱ってしまったのです。
クロウナガンさんはやっとの思いで、自分のベッドまで這っていきました。そしてそのまま重い病気になってしまったのです。

 夜になりました。空に明るい月が顔をだしました。今日は満月です。空のお月様はクロウナガンさんの家の窓をのぞき、石膏の三日月をじっと眺めました。そしていいました。「石膏の三日月さん、クロウナガンさんを助けて上げなさい」そうしてお月様は体をふっとゆすりました。
 すると、そこから大きな光の帯が出て、夜空を流れ、クロウナガンさんの家の三日月に入ったのです!三日月はびっくりしました。いのちが入ったのです。口もきけるようになっていました。
 三日月は隣にいるウサギに声をかけました。「ウサギさん、ウサギさん」。すると、ウサギもまた、それまでただの石膏のウサギだったのが、たちまち生きたウサギのようになったのです。ウサギは目をぱちくりさせて、三日月を見ました。「まあ、わたしたち、お話ができるんですね」ウサギがうれしくってたまらずそういうと、その声でこんどは鐘が目を覚ましました。「私は鐘ですが、仲間に入れてください」
 それから三日月とウサギと鐘はクロウナガンさんのことをはなしました。
 「クロウナガンさん、病気になってしまったようです。どうしたらいいでしょう」三日月がそういうと、ウサギがいいました。「食べるものがあるといいんですけどねー」鐘がいいました。「なんとか私たちで手にいれられないでしょうか」
 それを聞いていた空のお月さまが三日月にいいました。「外に出てごらんなさい」
 三日月はびっくりしました。家の外に出られるなんてそれまで考えたこともなかったのです。三日月はそっと体を動かしてみました。動きました!それを見てウサギもそっと体を動かして見ました。動けました!三日月とウサギはそろそろと家の外に出ようとしました。「私を置いていかないでくださいよー」と鐘が言いました。鐘も体を動かしてみました。動きました!

続きは明日・・・

by mimishimizu3 | 2012-01-16 16:26 | 童話