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2009年 09月 02日
ヤブツルアズキ  雑草と呼ばれる花々  № 76
   
雑草を撮っていると、時として思わぬ出来事にであいます。

いつもの散歩コースを歩いているときでした。ため池の崖には、さまざまな雑草が咲いています。
マルバハギ、ツリガネニンジン、クズ、センニンソウ・・・夏草に覆われながらも、けなげに咲いているそうした花たちの中に、小さな、小さな花が咲いているのに気づきました。カメラに収め、家に帰り手元の本で調べました。
ありました。コバノカモメヅル。5ミリくらいの本当に小さな花です。

私は「雑草と呼ばれる花々、№ 74 」にアップしました。
その翌日、またその小さな花に会いたくなって、その場所に行ってみました。
コバノカモメヅルに挨拶してから、さらに歩を進めてゆくと、黄色い、始めてみる花がありました。

ヤブツルアズキ  雑草と呼ばれる花々  № 76_f0103667_15181861.jpg


「なんだろう・・」そう思ってカメラに収めていたときです。
「それはなんという花ですか・・・」
その声に驚いて振り返ると、犬を連れた、20代と思われる青年が熱心にその花を見ていました。
「さあ・・・、わからないのですよ。調べてみないと・・」
わたくしがそういうと、その青年はカメラを取り出し、その黄色い花を写し出しました。
「こうした花がお好きなのですか?」私はうれしくなってそういいました。はにかむような、照れるような表情を浮かべ、その青年は「ええ・・」といいました。雑草を好む人は案外いるものなのです。

私は、それならと、「あそこに、コバノカモメヅルという小さな花がありますよ」と教えてあげました。

別れるとき、私は何気なく、「この黄色い花の名前がわかったらおしえてくださいね」といいました。「はい」と、青年はかすかに返事をして、私たちは右と左に分かれて行きました。
歩き出してから、私は「教えてくださいね」といったって、名前を名乗ったわけでもはなし、住所を知らせたわけでもなし、電話も、ましてやメールなど、どんな連絡手段も教えていないのだから、その場限りの、いわば、外交辞令にすぎないだろうな、と思い、それっきりそのことは忘れてしまっていました。

ところが、です。

2日ほどしてから、私はまた、その散歩コースを歩いてゆきました。コバノカモメヅルもまだありました。そうそう、と私は思い出しました。名前のわからない黄色い花があったな・・

ヤブツルアズキ  雑草と呼ばれる花々  № 76_f0103667_15205445.jpg


その花の見えるところまで来て、私は思わず、「エッ」と声をあげました。
その黄色い花の枝に、なにか白いものが見えるのです。何だろう・・・心臓の高鳴りを押さえながら、私はかけよりました。白いメモ用紙が、くるっとまかれ、花の枝に刺してありました。

「ヤブツルアズキ」

紙にはそれだけ書かれてありました。

あの青年が置いてくれたのでしょう。私は胸がいっぱいになりました。忘れず、きちんと調べ、教えてくださったこともさりながら、その方法のなんとおしゃれなことか!
センスあふれる、平安貴族を思わせる優雅なやりかたに、私はすっかり感動してしまいました。
電話より、メールより、ずっとずっと素敵な、こんな連絡方法があったのですね。・

翌日私はメモ用紙に「ありがとうございました」とだけ書いて、同じようにその黄色い花の枝に括り付けました。

翌日その場所に行って見ると、そのメモ用紙はなくなっていました。
ヤブツルアズキが初秋のさわやかな風に揺れていました・

by mimishimizu3 | 2009-09-02 15:27 | 雑草と呼ばれる花々


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