2010年 11月 28日
レオニー 私がイサム・ノグチの作品を初めて見たのは、東京北の丸にある東京国立近代美術館の前庭にある「門」でした。 鋭角であるにもかかわらず、どことなく暖かく、やさしく包み込まれるようで不思議な感じを持ったものでした。 イサム・ノグチが、日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれた世界的彫刻家ということは知っていても、それ以上のことは疎く、とくに、母親のことなど何も知りませんでした。 この映画は、イサム・ノグチを主人公にするのではなく、その母、レオニーを主人公にしています。 レオニーは、20世紀初頭、ニューヨークで日本から来た詩人、野口米次郎の編集者となり、彼のアメリカでの成功に大きく貢献します。やがて二人は恋に落ちレオニーは身ごもります。しかし戦争が始まり、野口は日本に帰国してしまいます。 彼女は一人で子供を生み育てていましたが、数年後、言葉も通じず、風俗習慣も違う日本に行くことを決意します。 しかし、日本では野口はすでに結婚しています。「日本では二つの家庭を持つことは普通なのだ」と言い放つ野口。野口に平手打ちをするレオニー。怒った彼女は、野口の元を離れ自立の道を歩むことにします。 シングルマザーなどという言葉さえなかった時代、偏見と差別が当たり前の中、言葉もわからない異国で毅然と生き、子供を育てていく姿は感動的です。 100年前に、こんな風に自分の人生を選び、決断し、実行した女性がいたのですね! レオニーは自分たちの家を作るとき、まだ少年のイサムに家の設計をまかせます。そして、大工の棟梁から、「ものづくり」の喜びを教えられます。(この、イサムにかんなやノミの使い方教える大工役の大地康雄さんがいい味を出しています)後年、彫刻家として大成するイサムの萌芽はこんなところにあったのかもしれません。 子供の才能にいち早く気づき、開花させることに心を砕いたレオニー.そのおかげで、今、私たちはイサム・ノグチの作品に接することができるのでしょう。 映画の最後は、公園全体を設計し、イサム・ノグチの集大成ともいわれている北海道の「モニレ沼公園」、この公園で、たくさんの子ども達が楽しく遊びまわるのを、レオニーがゆっくりと眺めている幻想の場面で終わります。 製作、脚本、監督は松井久子氏、女性監督です。彼女の熱い思いがあってこの映画はできたのでしょう。 レオニーを演ずるのはエミリー・モーティマーさん。野口米次郎を演じるのは歌舞伎役者の中村師童氏。流暢な英語で熱演されていました。 見終わって、私もいつか、北海道に行き「モニレ沼公園」をたずねてみたいと思いました。
by mimishimizu3
| 2010-11-28 07:36
| 映画
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