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2011年 11月 19日
波の音
病気で伏せっていたとき、息子が縦10センチぐらいの、小さな、本当に小さなi・podを持ってきてくれた。
私は,I・podなど使いこなせないけれど、ただCDの代わりに音楽を聞くことにしたのだ。
その中には、こんな小さいものの中に、これほど入るの?というくらい、クラシックをはじめ、様々なジャンルの音楽が入っていた。が、ふと「自然音」というジャンルがあるのに目が止まった。
それは風の声や、木々のそよぎ、谷川のせせらぎ、浜辺にうち寄せる波の音、小鳥のさえずりなどであった。

私は、音量を低くして、波の音を聞いた。

波の音_f0103667_9234936.jpg

ザー、ザーと、うち寄せては返るだけの、単調と言えばいえるその「音」は、しかし、なぜか打ちひしがれていたその時の私の心を、ふっと和ませてくれた。
深い海の底で、ゆったりと揺られているような、遠い昔、どこかに聞いたことがあるような・・・・
そうか!と私は思った。
この心地よさ、優しさは、母の胎内の、「羊水」にいたとき感じていたものと同じなのではないか・・・
写真で見る「胎児」は母の羊水にくるまれ、まるまっこくなっている。今の科学は、そんな胎児でも音も聞こえているということがわかっているらしい。
あの時聞いた「羊水」の音はこのさざなみに近いものだったのかもしれない。

「命」は46億年前、海の中で誕生したと聞いたことがある。
46億年という時間がどれほどのものか、想像はできないけれど、46億年前、海の中で生まれた、ちいさな「命」が、今も、人類すべての人間の、DNAのなかのどこかに潜んでいるのかもしれない。

海は、時に凶暴になり、3.11のようなことも起こすけれど、でもやはり海は、すべての命の源であり、ふるさとなのだ。

夜寝るとき、私はそのi・podを枕の下にいれた。
静かな、やさしい波の音がかすかに耳元に響いた。

全てを受け入れ、全ての運命を許し、全てを認めようと思った。

by mimishimizu3 | 2011-11-19 09:24 | エッセイ


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